外耳道炎・外耳道真菌症(耳のかきすぎには要注意!)

以下の内容は当院院長が岐阜放送ラジオで放送されている「ラジオホームドクター」に出演した際にお話しした内容に最近のトピックスや治療法などを追加して記載されております。

耳掃除をやりすぎて痒くなったり、痛くなったりした経験はありませか?

そんな時は外耳道炎や外耳道真菌症(カビ)になっている可能性があります。


<外耳道炎・外耳道真菌症とは>

外耳道とは、耳の穴の入り口から鼓膜までのトンネル状の部分の事を言います。

この部分の皮膚に炎症を起こすことを「外耳道炎」と言います。

そして、その部分に”カビ”が生えることを「外耳道真菌症」と呼んでいます。

耳の中に”カビ”が生えるというとびっくりされる方も多いかもしれませんが、耳鼻咽喉科医として診療に携わっていると、実はこれが意外と多いのです。

<原因など>

原因として最も多いのは、耳掃除のし過ぎによるものです。

耳の中の皮膚は非常に薄くて敏感です。そのため、少し耳を掃除しすぎてしまったり、強く触ってしまうと簡単に小さな傷を作ったり、炎症を起こしてしまいます。(外耳道炎)

本来の正常な皮膚には、耳の中の環境を良好に保ち菌の増殖を抑える自浄作用と、異物の侵入を防ぐバリア機能が備わっているのですが、これらの機能が耳の触りすぎによって低下することによって、さまざまな問題が起こってくると考えられています。

また例えば、腕などを蚊などに刺された時などに掻きむしると汁が出ることがある様に、耳の中の皮膚も触りすぎると炎症を起こし、表面から分泌液が出てきて、耳の中がジュクジュクと湿気を帯びるようになってきます。

それに加え、もともと耳の中は体温で温かいですので”高温多湿”になり、”カビ”の生えやすい環境になることも一因かと思われます。

原因となる”カビ”には、アスペルギルスやカンジダといった種類の”カビ”(真菌と言います)が多いですが、これらは、常に普通に大気中に存在しています。普段はおとなしい真菌であまり悪さはしないのですが、これらが、そのじめっとした高温多湿の環境の耳の中に生えたものが外耳道真菌症です。

”水虫”はご存じかと思いますが、水虫も”白癬菌”という”カビ”(真菌)によるもので、これもじめっとした足の指間などにできやすいのと同じような理屈かと思われます。

<症状など>

おもな症状は、耳の痒み、痛み、耳だれ、耳がこもっているような感じやボーンとする感じなどです。

また耳掃除の際に、黒っぽい色をした耳あかがついてきたり、酒粕のような耳あかが出てきたりする場合もあります。

ひどくなると外耳道が腫れたり、外耳道から出血したり、あるいは聞こえが悪くなったり、まれに鼓膜に穴がが開いてしまったりすることもあります。

<治療などについて>

まず、治療の第一歩は耳を触らないようにすることです。

しかし、これが簡単な事のようで実は非常に難しいのです。

といいますのも、外耳道の病気になる方は、先ほども述べたように、もともと耳を掃除することが半ば癖というか習慣になっている方が非常に多く、また痒みなどを伴うことが多いため、”触らないようにすることが大切と頭ではわかっていても、ついつい手が耳にいってしまう”という方が少なくありません。

またそういった方は、普段から耳を触っていることが当たり前になっており、特に意識した行為ではないため、そもそも耳掃除をしすぎているという自覚のない方も割と多いです。

次に耳鼻咽喉科での治療についてですが、まずは外耳道内の炎症の緩和に努めます。

そして真菌症の場合には、外耳道内にたまった”カビ”を吸引除去したり、耳洗浄といって消毒液などで洗い流したりしてきれいに除去します。

その後”カビ”の感染を抑える薬を塗ったりします。

また、腫れや痛み・痒みの強い場合には適宜内服薬などを使用することもあります。

しかし、先ほどもお話ししたように耳の中は体温などで温かいうえに、外気に触れにくく湿潤しやすい環境ですので、再発を繰り返しやすく完治までには非常に長期間の通院が必要になる場合が多いです。

また一旦治っても、耳掃除の習慣がやめられず、再び感染する方も非常に多いです。

そのため、根気強く通院することが大切です。

最後になりましたが、最近では耳掃除はやりすぎてはいけないと言われています。

今回お話しした外耳道真菌症以外でも、耳掃除によって引き起こされる耳の病気は多数あります。

そのため耳あかなどが気になる場合には、自分で取ろうとして深追いせず、耳鼻咽喉科で掃除してもらうことをお勧めします。

正常鼓膜

外耳道真菌症(カビ)